血中コレステロールが高いと、動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞の発症を促します
「コレステロール=健康の大敵」というイメージを持つ方は少なくありませんが、細胞膜を構成する材料となるのをはじめ、副腎皮質ホルモンや性ホルモンの合成、脂肪分解酵素の胆汁酸の原料になるなど、私たちが生命活動をおこなううえで欠かせない重要な役割を果たしています。
脂質(脂肪)の一種であるコレステロールは、主に肝臓で作られているほか、毎日の食事で1日300〜500mgほど摂取しています。コレステロールは体の中に約100〜150gが存在し、ち約10%が血液中に流れています。
コレステロールが問題となるのは、鶏卵や魚卵、レバーなどの高コレステロールの食品や、高脂質・高エネルギー食品、運動不足、喫煙、ストレスなどの不適切な生活習慣が積み重なり、血中コレステロール値が適切な範囲で維持されなくなった場合です。
血中コレステロール値が高くなると、余分なコレステロールが血管壁にへばりついて動脈硬化の原因となります。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病の主要な原因となりますので、その予防のためにはコレステロール値を測定して、生活習慣全般の改善等を通じて上手にコントロールすることが重要です。
コレステロールは脂質の一種ですが、血液と脂質は「水と油」の関係ですので、このままでは分離してしまいます。そこで血液中を運ばれるときには、タンパク質と結合し、血液になじみやすい形をとっています。これを「リポタンパク」といいます。
リポタンパクにはいくつかの種類がありますが、肝臓から全身に送られるときには「LDL」で運ばれ、末端で余分になったものは「HDL」で改修されて、肝臓に戻されます。
LDLコレステロールが多いと、末梢に運ばれるコレステロールが多くなりますから、余分なものは血管壁に溜まって動脈硬化の原因となります。一方、HDLコレステロールが多いと末梢の余分なコレステロールを回収してくるので、血管壁に溜まるコレステロールは少なくなり、動脈硬化の予防になります。LDLコレステロールが「悪玉」、HDLコレステロールが「善玉」と呼ばれる所以はここにあります。
中性脂肪の過剰蓄積はメタボと関係の深い内臓脂肪型肥満につながります
私たち人間は活動のエネルギー源となる糖質や脂質を食品から摂取していますが、食べ過ぎや身体活動が少ないなどの理由で消費し切れなかった等質は、肝臓で代謝されて中性脂肪となり、最終的にはいざというときのエネルギー源として肝臓や脂肪細胞で貯蔵されます。
この中性脂肪の値が高くなると、コレステロールの場合と同様に動脈硬化を促進させる原因となります。また、この数値が高い人には、しばしば糖尿病や脂肪肝もみられます。つまり、中性脂肪を調べることは動脈硬化や糖尿病、脂肪肝の危険度を知る上で重要な役割を果たしているのです。
中性脂肪は付きやすい場所が人によって異なり、腹部を重点に太り、男性に多く見られる「内臓脂肪型」と、太もも中心に太る「皮下脂肪型」に分けられます。内臓脂肪型はメタボリックシンドロームと関係が深く、脂質異常症、糖尿病、高血圧を伴いやすいのが特徴です。
なお従来は「高脂血症」と呼ばれていた病気は、2007年に「脂質異常症」に名称が変更されるとともに、その診断基準から総コレステロールが除外ざれ、上記のHDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の3つとなりました。
中性脂肪については、医師の指導の下、適切な食事療法を受ければ約30%低下させることができるとされています。また、適度な運動を心掛けることも重要です。