アルコール性の肝障害かどうかはγ-GTPの検査でほぼ確定できます
γ(ガンマ)-GTPは酵素でタンパク質を分解する役割を果たしており、腎臓に最も多く分布しています。ただし、腎臓の場合は尿に出てしまうので、腎臓に病気があっても、検査値が上昇ことはほとんどありません。
γ-GTPは、肝臓になんらかの病気(急性・慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん)が疑われる場合に上昇しますが、なかでもアルコールの常飲が原因による肝臓障害に対して敏感に反応します。
γ-GTPの血中濃度は毎日の飲酒量と明確な相関関係にあります。日本酒に換算して、「休肝日」が無い状態でほぼ毎日2合以上飲んでいる人は、今はまだ検査数値が基準以内でも、アルコール性肝障害を起こしやすいことが分かっています。女性は男性の3分の2の飲酒量で発症します。
異常値が認められた場合には、他の肝機能検査の結果とも合わせて検討を行いますが、それらの検査でも異常値を示す場合には、急性・慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、閉塞性黄疸などが考えられます。他の検査は異常がなく、γ-GTPの数値のみが高い馬場合は、アルコール性の肝障害か膵臓の病気が考えられますので、数日間、アルコールを断って再び検査を行います。
なお、女性の場合は女性ホルモンの作用が原因で数値が低下することがあります。妊娠中、とくに後期になるとその傾向が強くなりますが、心配要りません。
肝機能に異常があると、ASTとALTの血中濃度は上昇します
ASTとALT(従来はGOTとGPTと呼ばれていました)はアミノ酸の生成にかかわる酵素です。ASTは肝臓に多く分布しているのをはじめ、骨格筋や心筋、腎臓などにも分布しています。ALTも同様ですが、肝臓への分布が大半となっています。
ASTとALTは、それぞれが存在する臓器の細胞が破壊されると血液中に流れ出るため、同時に調べて比較・検討をすれば、障害が起きた臓器の診断に有用です。健診では、肝臓の働きを調べる検査として必ず行われます。
数値の上昇の程度が軽い場合は、どの臓器に異常が起きているのかをこの検査だけで判断することはほとんどできません。中等程度の上昇が認められれば、肝臓の障害が原因である確率が大きくなります。
特にALTは肝細胞の変性や壊死に敏感に反応しますので、中等程度の上昇があれば、肝臓の障害があることはほぼ間違いありません。ASTの場合は、肝臓の障害のほか、心筋梗塞や骨格筋に障害があることもあります。
ASTとALTは双方の上昇バランスである程度の病気の推測が可能です。例えば、ASTとALTがいずれも高値で、かつ「AST<ALT」の場合は慢性肝炎が疑われ、逆に「AST>ALT」で、かつAST/ALT比率が2.0以上の場合は肝硬変が疑われます。なお、検査前日の飲酒や激しい運動、ステロイド薬の使用は検査数値を上昇させる原因となることもあります。
慢性肝炎と診断された場合、食事指導が行われます。従来は高たんぱくの食事が推奨されていましたが、現在では栄養バランスを重視した栄養指導が主流となっています。