病院・クリニック勤務の経験を活かせる人気のお仕事

チューブに臨床データから算出された目盛りが付いており、締め方の個人差をなくせます

看護技術の参考書は数多く出版されていますが、採血の際に重要なポイントとなる「駆血帯を締める強さ」について詳しく書かれているものは少なく、書かれていても「動脈圧より低く、静脈圧より高い圧力で装着する」といった目安のみで、どのようにすれば適切な強さで装着できるかを示したものはほとんどありません。

アメリカの静脈採血に関するスタンダードにおいては、適切な駆血圧として水銀血圧計のマンシェットを使用した場合には、末梢の動脈血隆昌外を考慮して「40mmHg以下にする」と記載されていますが、日本の「標準採血法ガイドライン」では具体的な静脈穿刺時の駆血圧は示されていないのが現状です。

看護雑誌でも紹介されました

そこで岡山県立大学保健福祉学部看護学科の森教授は、日常的に使用されている「ゴム管製駆血帯」および「ベルト式駆血帯」における適切な駆血圧を検討するとともに、どうすれば簡単に適切な駆血圧で装着できるかについて検討を行いました。

まず、肘窩部静脈における静脈穿刺を想定して、駆血帯を上腕周囲径の95%、90%、85%、75%の長さで装着し、静脈怒張度と駆血圧を測定して検討した結果、以下の駆血厚圧が適切であると考えられました。

  • ゴム管製駆血帯…70〜95mmHG
  • ベルト式駆血帯…45〜95mmHg

これ以下の数値だと対象者のほとんどで十分な血管の怒張を得ることができず、逆にそれ以上だと苦痛が増すだけで血管はそれ以上怒張しませんでした。しかし、この研究に参加した被験者からは「病院ではもっと強く締められている」という意見があったため、臨床現場で働いている看護師に各自が通常使用している駆血帯を装着して、実際に駆血圧を測定しました

その結果、駆血圧は60〜271mmHgと非常に幅広い分散を見せており、ほぼ適切とされる100mmHg以下で装着した人は1/3と少なく、200mmHg以上の高圧で装着した看護師も2割もいました。駆血圧が高くなる要因としては以下のことが考えられます。

  1. 駆血帯を適切な強さで装着する方法を習っていない。
  2. 装着が緩すぎると十分な静脈の怒張が得られないことを心配して、強く締めすぎている。
  3. 自分がどれくらいの強さで装着しているかを認知していない。
  4. 装着する強さの目安がないため、意図した強さで装着することが難しい。

1〜3は看護師側の要因ですが、4は駆血帯そのものの要因として挙げられます。そこで森教授らが研究データを元に開発したのが、チューブ本体にエビデンスに基づき算出された目盛りが入った「メモリ付き駆血帯(写真参照)」です。

新人でもベテラン並みの採血を目指す!

チューブ本体にはA1〜A10までの目盛りが付けられており、患者さんの上腕部に軽く巻いた時にクリップの当たる位置を「基準位置」とします。ここではA3が基準位置だったと仮定しましょう。

この基準位置より1目盛り短く巻く(=A4)と駆血圧の平均値が45mmHgとなり、対象者の約30%に静脈穿刺可能な静脈怒張が得られました。基準位置より2目盛り短く巻く(=A5)と駆血圧の平均は75mmHgとなり、対象者の約80%で十分な静脈怒張が得られました。

基準位置よりも3目盛り分短く巻く(=A5)と駆血圧の平均値は110mmHgとなり、対象者の約90%で十分な静脈怒張が得られました。4目盛り以上強く巻くと、駆血圧の平均は140mmHgとなり、静脈度調度はかえって減少傾向にあり、痛みが強くなるだけでした。

この結果から、一般的には基準位置からマイナス2目盛りで装着のが適切とされています。適切な強さで装着すると、病院では怒張が確認しにくいといわれていた対象者でも十分な怒張が得られたケースもありました。加えて、血管が怒張しやすい人にはマイナス1目盛りの位置で装着し、怒張しにくい人にはマイナス3目盛りの位置で装着するとよいでしょう。

目盛りはエビデンスに基づいて算出された信頼性の高いものですので、新人・ベテラン、上手い・下手、キツイ・緩いなどといった締め方の個人差を最小限に抑えることができます。適切な血管の怒張がひと目でわかるようになっているので、看護学生の教育にも最適です。

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